赤道儀を使用するうえで極軸合わせは必ず必要な作業です。
今更ですが極軸合わせの目的は、赤道儀の回転軸と星の日周運動の回転軸を平行にすることです。具体的には、天の北極(アバウトには北極星)を所定の位置に導入すればよいのですが、これが思った以上に難しい。
初心者はここでつまづく方も多いのではないでしょうか?
そんな私も今まで躓きまくってまして( ^ω^)・・・
失敗しまくって来たわけですが、前回の撮影でようやく納得のいくレベルでの星の歩止まりを実現できました。
なのでこれまでを振り返りながら極軸合わせについて詳しく記し、これから赤道儀を使ってみようかなと考えている方のお役に立てればと思います。
極軸合わせの実際
あくまでも目標は星景写真を撮るための精度があればよいので、せいぜい150~200mmぐらいまでの焦点距離でのお話となります。
まずは北極星を探そう。
北極星は北の空にあります。
北斗七星のひしゃくの頭の辺を約5倍伸ばした位置、もしくはカシオペア座の両辺の交点と真ん中の星を結んだ辺を約5倍伸ばした位置にあります。
幸いなことに、北極星の近くには北極星以外に明るい星がないので、上の画像のように北斗七星もカシオペア座も見えているならまず間違えることはないと思います。しかし、天候やその場所の地形や日周運動の星の位置によって、片方の星座しか見えていない場合も多々ありますのでその時は注意が必要です。
先日私が北極星を間違えた時(↓記事参照)は北斗七星は地上に隠れていたためカシオペア座を基準に探したのですが、たまたま北極星が枝に被ってしまっていて、上述した”約5倍”の距離感を間違えてしまい全く違う星を北極星だと思い込んでしまいました。
いつもは携帯のアプリで星の位置を確認するのでこんな間違いは起こりにくいのですが、その時はたまたま携帯を車の中に忘れていてこのような惨事につながってしまいましたw
PF-L Assist
ちなみにそのアプリとは「PF-L Assist」というビクセンさんの無料アプリです。
こちらは後述する極軸望遠鏡使用の際の補助アプリです。
現在のカシオペア座や北斗七星の北極星に対する位置関係を教えてくれるので、北極星の同定に役に立ちます。
※このアプリでは北極星の方角はわかりません。
北極星が見つかったらいよいよ極軸合わせです。
北極星を赤道儀の”のぞき穴”に導入する極軸合わせ
多くのポータブル赤道儀には極軸合わせのために北極星を導入する”のぞき穴”があります。
この”のぞき穴”から北極星が見えれば導入完了!極軸合わせ完了!というわけです。
実際に経験する前はとても簡単に考えてましたが、やってみるとそれほど簡単ではなかったです。
もちろん個人差はあると思いますので、うまく導入ができなかった方は以下の私が実際に試みた導入方法を参考にしてみてください。
🥤ストローを使用
真っ暗なところではのぞき穴がどこにあるのかもよくわからないです。
穴の位置を把握するために短く切ったストローを差し込んでみました。
こうすることで穴の位置は簡単に把握できるようになりました。
ただ赤道儀が低い位置にある場合、下から覗き込む形になるのでまっすぐのぞき込むことがより難しくなります。
あとは白っぽいストローだと光が乱反射して星が薄く見える気がします。
それと単純に穴が狭くなる分、導入が難しくなります(導入できた時の追尾精度はあがるかも)。
レーザーポインターを使用
レーザーポインターを三脚に固定し北極星を指し示した状態で、それをのぞき穴で探す方法。
更に確実なのはのぞき穴からレーザーを照射し位置を合わせる方法。
私はこの方法で初めて北極星の導入に(いちおう)成功したので結構使えるとは思いますが、いかんせん他の人に迷惑なので頻繁には使えないのと、バレバレで恥ずかしいので覚悟が必要ですw
空気がモヤってるとレーザーが散乱して使い物にならないのも注意。
赤より緑のレーザーの方が良く見えます。
詳細は上の記事を参照。
照準器を使用
詳細は上の記事の「野鳥撮影用の照準器を使って北極星導入」をご覧いただきたいのですが、この方法が一番簡単でしたね。
照準器はカメラのアクセサリーシュー(ホットシュー)に取り付けできるものが良いと思います。
北極星をのぞき穴に導入する際の目の使い方(コツ)
上記のような方法を色々試してみた結果、現在は特に何もしないでのぞき穴に導入できるようになりました。
結局は”慣れる”しかないのかもしれませんが、目の使い方にもいくつかコツがあります。
★目を暗順応させる
基本的なことですが、明るいものを見た直後は目の瞳孔が閉じているため、弱い光が取り込みにくい状態にあります。10分ぐらいは明るいものを見ないで暗順応させましょう。
★両眼で見る
穴をのぞく時には片目で見るのが普通ですが、星の導入のときには両目で見ながら北極星を導入しましょう。
そうすることで星の位置を常に把握できるので導入しやすくなります。
★そらし目
穴をのぞいて北極星を見るときに、少し視線をずらしてみると星の光が確認できる場合があります。
いわゆる「そらし目」と言われる技です。
私は無意識でやっていたので「もしかして気のせいかな?」と思うこともありましたが、医学的にも根拠があることでかなり有効だと思います。下記のリンクに大変わかりやすく詳しく書いてあるので参考にしてください。
★のぞき穴から少し距離をとる
より追尾の精度を上げるため、北極星は穴の中央に導入できるとベストですが、あまり目を近づけすぎると穴の中の星の位置がわかりにくくなります。そんな時は少しだけ穴から目を遠ざけてみると穴の全体が見えるので星の位置も把握しやすくなります。
北極星のぞき穴による極軸合わせの追尾精度(SWAT-310V-specの場合)
SWATのマニュアルには以下のように書いてあります。
北極星ののぞき穴の中央に北極星を導入すれば、±1度程度の精度で極軸設置が可能です。この精度は50mmレンズを7~8分、100mmレンズでも3~4分は追尾できる設置精度があるので、広角レンズならまったく問題がありません。
ここで気になるのは「のぞき穴の中央に北極星を導入すれば」という文言。
実際は中央に導入できているかどうかが(私には)とてもわかりづらかったです。
なので個人的には、マニュアルに記述されている半分の追尾精度で考えるようにしています。
つまり、焦点距離50mmなら3.5~4分、100mmなら1.5~2分となるので、
焦点距離50mmまでならのぞき穴の北極星導入で星景写真の追尾撮影は(ギリ)可能と感じています。
それ以上となると個人的には不安が残るので、別の方法での極軸合わせの必要があると感じます。
極軸望遠鏡PF-LⅡを使った極軸合わせ
赤道儀ののぞき穴に北極星を導入するだけでは50mmより上の焦点距離では不安が残る。
ということで極軸望遠鏡を使った極軸合わせに挑戦しました。
極軸望遠鏡PF-LⅡによる極軸合わせの追尾精度(SWAT-310V-specの場合)
PF-LⅡのマニュアルには「約3’角以内のセッティングが可能」と記述されています。
対してSWATのマニュアルには、のぞき穴の中央に北極星を導入すれば「±1度程度の精度で極軸設置が可能」で、その結果「100mmでも3~4分は追尾できる」と書いてあります。
ということは、1度の60分の1が1’(分)なのでPF-LⅡで極軸を合わせれば、100mmは余裕で200mmも普通に追尾可能な精度であることが予想されます。
ちなみに上の画像は極軸望遠鏡で極軸を合わせた後、焦点距離98mmで2分追尾撮影した画像を20枚コンポジットして一部を切り出した画像です。
星像は若干縦長にも見えますが、これ以上の焦点距離で星景写真を撮影することはそれほど無いことを考えると、必要十分な歩留まりだと個人的には感じます。
極軸望遠鏡PF-LⅡによる極軸合わせの方法
大まかな手順と注意点
①まずは極軸望遠鏡PF-LⅡのみで北極星を見てみる。
これでPF-LⅡで北極星がどのように見えるかが把握できるので、必ず事前に見ることをお勧めします。この時も両眼視すれば導入しやすくなります。
②PF-LⅡを赤道儀に設置する。
③赤道儀の北極星のぞき穴に北極星を導入する。
PF-LⅡがきちんと設置されていればこの時点でPF-LⅡの視野にも北極星が導入されているはずです。
④PF-LⅡの視野内にあるカシオペア座と北斗七星の絵を、実際の星空の位置と同じ方向になるように回転させる。
その時に上述したアプリPF-L Assistを使用すれば星座が隠れていても大丈夫です。
⑤POLARIS(北極星)、δUMi(こぐま座δ星)、51Cep(ケフェウス座51番星)を視野内の所定の位置に合わせる。
下の画像は2020年12月にPF-L Assistで表示された画像です。
アプリでその時の星の位置を表示してくれるので、それと同じになるように実際の極軸望遠鏡で星の位置を合わせます。
最初にポラリス(北極星)を合わせて、極軸望遠鏡の視野を回転させて他の二つの星の位置を合わせます。すると北極星の位置がずれるので再び位置を合わせたら、また他の二つの星を合わせる・・・を繰り返します。
その年に合わせた位置(目盛り)があるのでなるべく正確に合わせましょう。
ちなみに少し薄めの赤で表示されているのは、南半球で南天を合わせる時に使用する絵です。
将来的にはこれを使ってみたいですが・・・今回は無視してください。
さて最後に注意点。
PF-LⅡの視野内の星は、肉眼で見る位置と上下左右が逆さまに写ります。なので位置合わせの際に動きが逆になりますので注意してください。
その他詳細は取扱説明書をご覧ください。
下記リンク先で”極軸望遠鏡”と検索し、【極軸望遠鏡PF-LⅡ取扱説明書】をダウンロードしてください。
極軸合わせに微動雲台は必要か?
極軸合わせ時に星の位置を調整する雲台ですが、最初はほとんどの人が手持ちの自由雲台や3WAY雲台を使用されるのではないかと思います。私もそうでした。
赤道儀ののぞき穴に北極星を導入するだけなら、わざわざ高いお金を払ってまで微動雲台を買う必要は無いと思います。あれば格段に導入しやすくなりますが。
しかし、極軸望遠鏡で極軸合わせを行うなら微動雲台は必須と言っても良いでしょう。少なくとも私は微動雲台が無ければ無理です。
【今回購入した微動雲台】
ユニテック 極軸微動ユニット
前後左右にヌルヌル動きます!星のわずかな位置調整が非常に簡単になりました。想像以上に便利ですが、ほぼ極軸合わせ専用雲台となりますので万人に必要かどうかは微妙雲台です。
最後に
今後の自身の指標としてまとめると、
●焦点距離50mmまでの極軸合わせは赤道儀ののぞき穴で対応可能、それ以上は極軸望遠鏡で極軸合わせをするのがベスト。
かな。
とりあえず星景写真で必要となる150mm辺りまでの焦点距離の追尾撮影であれば、自分が求めるレベルの星の歩留まり具合を確保できそうな目途がついたので良かったです。
これ以上は今のところ必要ないけど、将来的に天体写真を撮りたくなったらポーラマスターとかオートガイダーとか言い出すんでしょうね。
沼に堕ちないように気を付けようw
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